これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.2 〜 2005.11

妙義山麓の青苔狛犬

中之嶽神社(群馬県下仁田町上小坂1,246番地)
建立年、石工名とも銘無し

奉犬された狛犬

狛犬奉納に関して使われる文字は「奉納」「献上」「献舎」「奉献」の文字が見られますが、奉献が最も多いように思われます。

漢和辞典を引いて見ると「奉献」の献は「犬を祖先の祭りに供える」という意味もあり、また字の成立においてもやはり犬を生け贄にすると云う意味があると書かれています。

従って狛犬を奉納するときは奉献とするのがふさわしいのでしょう。

ところが先日思いがけない文字を見つけました。
それは群馬県の妙義山にある中之嶽神社の狛犬の足座にありました。

狛犬の建立年は不明ですが享保年間頃と思われます。
苔むした足座をよく見ると「犬」の字が見えます。
犬の右側の字は傷んでいて読めませんが、かすかに残る横線の具合から「奉」の字があったのではないかと推測しました。
従って、「奉犬(ほうけん)」と読むのでしょう。
狛犬を神前に奉るので「奉犬」とはまことに的を射た文字だと感心したしだいです。
              
(写真・文 山田敏春)