台座の銘文は少ない字数ながら狛犬奉納者の願いを知るうえで貴重な情報源である。
しかし中には読めるが意味が解らないというのに時々出会う。
狛犬初心者の頃にはまったくお手上げだったが「異体字」や「異称」を知ることでやっと理解できるように
なった。
だが先日大田区の北野神社(南馬込)で今までに見た事が無い文字使いに出会った。
奉納者銘は「武州荏原郡馬込村」とあり、この北野神社を京都から勧請した平林重朗左右衛門の係累と思われ
る「平林□□□」の他2名の名があるようだが、かすれて読み取れない。
年号銘は「明治三年(1870)歳在庚午 喜久月吉辰」だが問題は「喜久月」だ。
喜びが長く続く月という意味だが具体的には何月を指すのだろうか?
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江戸時代の文字使いには
「声に出して読んだ時の音が同じなら
違う字を用いる」
例があるというのを思い出して
喜久月を「きくづき」と読んで再度、
月の異称を調べると9月の異称に
「菊月(きくづき)」とあった。
写真左:「喜久月」の銘
写真右:間違わないで?!
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狛犬には双方ともに子犬がいるが右像の子犬二匹が面白い。
一匹は下方に流れる親の尾に乗り、もう一匹は親の足に押さえられながら乳首を咥えて引っ張り、
左前足を親の下腹に突き出しているという構図であるが、なんとその子の足が親犬の「おちんちん」だと錯覚
して見えるのが何とも愉快だ。
(写真・山田敏春、阿由葉 文・山田敏春)
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