武志伊八朗伸由(波の伊八)、石彫の武田石翁、彫刻師初代後藤義光を安房の三名工と呼ぶ。
木彫の後藤義光(1815〜1902)は社殿や神輿の彫刻、扁額など数多くの作品を残したが、狛犬はと調べてみるとなんと石造狛犬が三対と石灯籠に獅子のレリーフが二面あるという。
今回は一番古い作品がある標高216mの高塚山山頂にある不動尊奥の院を訪ねた。
ふもとの大聖院(南房総市千倉町大川817)に付くと高塚山を目指す熟年の登山者達が集まっている。
低山ハイキングコースとして人気があるようだ。
案内板には頂上までの距離が880mとある。
正月休みでなまった足腰に鞭打って30分ほどかかったがなんとか狛犬の足元に着いた。
右阿像は背中に子犬、前足に欠けた籠彫りの玉を持ち、左吽像は、足元と背中に子犬がいる。
ほのぼのとした構図である。
台座の銘をみると「彫刻師北朝夷村住 後藤利兵衛」「明治十貮年二月橘義光 文化十二年五月生」と刻まれている。
なお北朝夷村は現在の千倉町である。
木彫家が材質のまったく異なる石を刻めるものなのかが一番の疑問であったが、銘文最後に
「右補助石工平舘村住 加藤佐兵衛」とあるので納得がいった。
狛犬の構図としてはかなり複雑なのでお互いの意志の疎通が大変だったと思うが、素晴らしい狛犬になった。
(写真・文 山田敏春)
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