青山石勝、東京では明治26年(1893)から昭和34年(1959)にかけて狛犬を残したが、唯一の獅子山が千葉県富津市富津の八坂神社にある。
大岩を積み上げた獅子山、右の阿像には口を開けた子獅子、左の吽像には口を閉じた子獅子が岩山の途中にいて上方の親獅子を見ている。
銘文は三カ所にあり「奉納 富津潜水組合」「西町 大嵩百太郎 三富松五郎 小坂嘉之吉」「東京青山 石勝刻」とあるが奉納年は無い。
富津と言えば漁業の町だが潜水組合と言うものに興味がわいた。
富津でも古くから素潜り漁が盛んでアワビなどの貝類をとっていたが明治13年(1880)に潜水服にヘルメットを着用してポンプで空気を送る機械潜水が導入された。
一般には潜水器漁と呼ばれている。
潜水器漁のおかげで富津の漁獲量が増え、また潜水技術を持つ者が日本各地に出稼ぎに行き、町全体の経済が大きく伸びたと言う。
なお現在も機械潜水は富津岬周辺で行われており伝統漁法として富津潜りと呼ばれている。
ちなみに「あまちゃん」で話題になった「南部もぐり」は房州の潜水夫が伝えたものという。
獅子山はそんな好景気のもとに奉納されたのだが、手がかりはないかと水盤と灯籠を見ると「奉納 大正八年七月(1919)」とあり獅子山の銘板にある三名の名も刻まれている、獅子山奉納も同時期であろう。
(写真・阿由葉/文・山田敏春)
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