これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.103〜 2014.4

久能山東照宮の先代狛犬

              久能山東照宮(静岡市駿河区根古屋390)


        

東京に現存する最古の狛犬は目黒不動尊(目黒区下目黒3丁目)の承応三年(1654)の狛犬だが、
同じタイプの狛犬が久能山東照宮の博物館前に置かれている先代狛犬だ。
ネット上では良く目にする狛犬ではあるが、いずれも造られた時期については触れられていないのでどちらが先に造られたのかが気になっていた。
先日久能山東照宮に行く機会に恵まれたので狛犬に対面してきた。

目黒不動尊の狛犬の銘は足と胸に刻まれているので、そこを見てみると阿像左足に「正保」と「四月」らしき文字が見える。

かつて唐門両脇にいて今は博物館前に置かれたもう一体の先代の銘が「久能山御宮前 林丹波守勝正 正保四亥年四月十七日(1647)」とあるので、同時期の奉納である事が考えられる。

東照宮の歴史の中で重要な年月日がある。
例えば「四月十七日」は家康の命日である。

では正保年間になにがあったかというと「正保二年十一月三日(1645)」にそれまで東照社と称していたのが「宮号宣下」がされて東照宮となったという経緯があった。
林丹波守の狛犬に御寶前ではなく御宮前の文字があるのはそのことを意味している。


正保年間は四年までだが、狛犬が宮号宣下を祝っての奉納と考え、正保三年四月十七日(1646)の奉納だとすると目黒不動尊の狛犬より八年前となる。


                                    (写真・文 山田敏春)