稲荷神社のキツネは実在のキツネをモデルに作られています。
しなやかで細い体、豊かな尻尾、耳がピンと立ち、とんがった顔、そしてキツネ目と言われるつり上がった目などが特徴です。
大方のキツネはこのイメージから抜け出さずに造られていて、子キツネ、宝珠、鍵などを持ったものが多く見受けられます。
王子稲荷には江戸期奉納のキツネが四対います。
それぞれ奉納の背景などを探ると興味深いものがありますが、中でも面白いのが脇参道入り口の宝暦十四年(1764)に奉納されたキツネです。
顔は笑い顔で、右のキツネに至っては何とタレ目なのです!
いわゆるキツネ目ではないキツネなのです。
三囲神社の狛犬
(延享二年/1745)
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このキツネを造ったのは八丁堀の石工太郎助ですが、この石工は墨田区の三囲神社の狛犬(延享二年造・写真左)や末社前の鳥居(明和元年造・1764年)を造った石工で、拝殿前にいる越後屋のキツネ(享和二年造・写真右)も太郎助の跡を継いだ倅か弟子の手によるものと思われます。
三囲神社は三井越後屋の神社とも云われており、石工太郎助は越後屋出入りの石工だったようです。 |
三囲神社のキツネ
(享和二年/1802)
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さて、王子稲荷といえば落語の「王子の狐」を思い出します。
美女に化けて男を騙すつもりのキツネが老舗料里屋の扇屋にあがりこみ、反対に騙されるというはなしですが、そんな人の良い?キツネが人間に騙されたと知った瞬間の顔を想像すると、こんな顔ではなかったかなと思っています。