これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.114〜 2015.4

吉兵衛の片流れ尾〜氷川神社(練馬区石神井台)

               氷川神社(練馬区石神井台1-18-24)


氷川神社(練馬区石神井台)の狛犬は四谷に住む石工本橋吉兵衛が願主の1人となって奉納したもので、
銘は 「奉献 天保八年丁酉九月建□(1837)世話人下石神井村 若者中」
   「願主 同村向□□本橋源次朗 四谷塩町二丁目 石工本橋吉兵衛」 とあります。
四谷塩町は現在の新宿四谷三丁目辺りで四谷消防署脇の横道です。

四谷のこのあたりには玉川上水の水を江戸の町の地下に通す為の、石樋(せきひ)を造った石工が多くいて、工事終了後に住み着いたと思われます。
吉兵衛の一家もその中の1人だったのでしょう。



吉兵衛の作品は
  新宿熊野神社に文化元年(1804)の狛犬、住まいとして「内藤新宿下町」
  新宿花園神社に嘉永6年(1853)のキツネ、住まいは「浄運寺横町」
と明記しています。

中野区本町の氷川神社に天保4年(1833)には「四谷塩町二丁目」、そして石神井氷川神社の天保8年(1837)の狛犬が確認されています。



当社の狛犬は吉兵衛晩年の作だろうか。

体には体毛を思わせる細かい刻みが施されています。
また大きな特徴として尾が前面にだけ流れています。

普通狛犬の尾は後ろから見ると左右対称に流れていますが、この狛犬は前面だけに流れています。

吉兵衛の新工夫なのか、それとも以前に片流れ尾があるのだろうか、宿題が増えた。
















              (写真・文 山田敏春)