目黒不動尊の宝剣塔前にいる狛犬台座には奉納者の小林卯吉・敏子の名と住所しかなく奉納年もない。
宝剣塔に城南講とプレートがあるのみだが、右脇の石碑を見ると「宝剣塔奉納御芳名 四拾回参拝記念 城南講」とあり、狛犬を奉納した人小林卯吉が相談役の一人として名を連ね、
裏に「昭和42年9月建之 講元小牧勇三 施工者長谷川寅吉」と記されている。
宝剣と狛犬を手掛けたのは長谷川寅吉という事か。
狛犬はブロンズ製に見えるがセメント彫刻と言われるものだ。
最初にセメント彫刻を見たのは神田神社裏の稲荷で昭和41年に再建されたブロンズに見えるキツネだった。
セメント彫刻はセメント造形などとも言われ大正末期から盛んになったようだ。
彫刻家は銅の不足からセメントへ、靖国神社の忠太狛犬の原型を作った新海竹蔵やハチ公の作者安藤照も手掛けている。
造園家は公園などの擬木・擬石を手掛け、左官職は昔から漆喰彫刻の技術があり、彫刻家にセメントの扱いを指導したそうだが、伊豆の左官長八はなんと文久三年(1863)にはすでに狛犬を手掛けていた。
府中大国魂神社と墨田区の江島杉山神社にも同じ型を使った狛犬がいるが彩色をしていない。
目黒不動尊のセメント狛犬は彩色することによって耐水性を高めさらにブロンズ狛犬としても認知されている。
(写真 / 文 山田敏春)
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