これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.13〜 2006.10

日中友好会館の狛犬

日中友好会館(文京区後楽1−5)
石川後楽園の向かい側にある日中友好会館入り口に籠神社(京都)の狛犬と大宝神社(滋賀県)の狛犬をあわせたような大きな狛犬が置かれています。
台石の銘は
昭和十三年四月竣功 満州国国務総理大臣 張景恵 寄贈 原型 清水多嘉示 石刻 明石亀太郎
と刻まれています。
日中友好会館は昭和10年に開設された「財団法人満州国留日学生会館」が元となっているようです。

犬を寄贈した満州国国務総理大臣 張景恵(ちょう けいけい)は満州国の軍人、政治家で満州事変で日本軍に協力、昭和10年から昭和20年までは満州国国務総理大臣を勤めた人物です。

犬の原型を造った清水多嘉示は美術界の重鎮。明治30年に信州の原村に生まれ、大正8年二科展入賞、その後大正12年に渡欧、ロダンの高弟に師事し、昭和3年に帰国。絵画と彫刻で活躍、武蔵野美術大学の設立に貢献名誉教授となる。昭和55年には清水多嘉示の作品を集めた八ヶ岳美術館がオープン。翌56年没。

著名な美術家が狛犬に係わった例としては、動物彫刻の第一人者「馬の勇八」と云われた池田勇八が昭和8年に造られた神田明神の狛犬の原型を担当しています。
また長崎「平和の像」で知られた北村西望は昭和12年に大きなブロンズ狛犬を制作しています。

犬を彫った明石亀太郎は東京杉並在住で芸大石彫の非常勤講師を勤め、多くの石彫作家にその技術を教えた昭和の名工です。

なお埼玉県秩父の秩父神社には明石亀太郎が原型を作った狛犬(写真左)がいます。

秩父神社(埼玉県秩父市番場町1-1)
建立;昭和10年12月

の狛犬は近代史の証人であり、また彫刻家 清水多嘉示の
知られざる創作活動の一旦を伝える貴重な狛犬なのです。

(写真・文 山田敏春)