これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.136〜 2017.6

伊八と藤兵衛

                  大山寺(千葉県鴨川市平塚1,718)





大山不動尊として知られる大山寺(千葉県鴨川市平塚)には波の伊八作の「向拝の龍」があり、5月第3日曜日の火渡り祭りには、やはり伊八作の「倶利伽羅龍像」が堂内から持ち出され祭壇から神事を見守るという。

伊八の作品と火渡り、それと本堂前の狛犬に会うために友人達と思い切って遠出した。


祭りの始まる一時間ほど前に着いたのでまず狛犬をじっくりみた。
素晴らしい出来だが台座正面の「奉納」の文字以外は不思議な事に一字も刻んでいない何故だろう。


狛犬上方の向拝の龍を見ながら再度狛犬を離れて見ると、どこかで会ったことがあるような感覚になり、そして思いあたった。

江戸京橋太刀賣石工藤兵衛」の作だと。
右の阿像は紐付きの玉持ち、左の吽像には背中によじ登っている子犬とそれを親の足元から見上げている子犬が居ます。
タテガミや尾の美しい流れは藤兵衛狛犬の中でも一番の出来と言えます。
藤兵衛自身の奉納と思われます。

なお同じ構図の狛犬が千葉県南房総市和田町の山神社(慶應3年)と神奈川県横須賀市東浦賀の東叶神社(奉納年不明)に居ます。


火渡りは般若心経と太鼓の響くなか始まり、返納された御札などが燃やされ供養、護摩炊きの白い煙に包まれた倶利伽羅龍像は神々しくそのお陰であろうか火渡りは無事に終わった。

                                    (写真・文;山田敏春 )