愛宕神社の銅狛犬
愛宕神社と云えば家光の命で馬に乗って石段を登り、更に下ったという曲垣平九郎の話が有名であるが、実際に石段の下に立ってみると、余りにも急な勾配なので歩いて登るのにもちゅうちょしてしまう。さらに登り切って上から下を見るに至っては恐怖を感じてしまうほどなのである。勾配は40度と云われ段数は86段だそうだ。
この石段下の両脇に立派な銅製の狛犬がいる。体に「献納者 前田栄治郎」と刻印されていて、台座にはめ込まれた銅板にはよれば昭和八年七月の奉納のようだ。 この人は大阪城の天守閣に据えられている8基のシャチホコの作者で、尚かつ寄贈した鋳金家として大坂では有名な人らしい。驚きました。 それにしてもこの狛犬、本来は参道と平行に置かれるはずでしたが、置き方を間違った為、阿吽が逆になっています。 建立から73年経った狛犬、陽気な性格らしく元気に見えますが、膝と頭に大きな穴が出来てしまいました。そしてこの穴にゴミを投げ込む人がいます。悲しいことです。 (写真・文 山田敏春) |
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2007年10月、この石段を味わいたくて訪ねてみた。 上記、石段の追加写真をご覧下さい。ここを馬で…というのは、確かにスゴイ! そして、狛犬を見てビックリ! 記憶にあった写真(上記)とまるで違うのだ! 吽像の膝と阿像の頭の穴(ゴミを入れられていた)が無い! すっかり補修されていて、全体の色も美しく仕上げられ、元々大きく立派だった狛犬が更に見事に よみがえっていた。 石造と違い、ブロンズはこんなに素晴らしく補修することが出来ると言うことらしい。 しかし帰宅後、写真をチェックしていて、もう一度驚いた! 既にお気づきの方もいるかもしれませんが、上の写真と良く見比べて下さい。 何と、阿像にツノが生えているではありませんか! ・元々あったツノ(頭の穴はツノが取れた跡だった?)を再現したのか? ・今回の補修時に付けてしまったのか? 普通、阿像は獅子ですから、狛犬の象徴であるツノはあり得ません。 中国では両阿(両獅子)ですから、日本にもそのタイプも沢山います。 しかし、狛犬/狛犬の組み合わせ(両狛犬)というのはほとんど無いのではないでしょうか? 作者である今村久兵衛は大阪の人です。 関西は獅子・狛犬の形態的伝統を重視して、吽像にツノのある狛犬像が関東に比べるとはるかに沢山います。そんな関西の鋳物師が阿像にもツノを付けるということがあるだろうか? 疑問は尽きませんが、珍しい阿吽両ツノの狛犬が出来上がっています。 (2007.10.25 追記写真・文 阿由葉) |