これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.141〜 2018.6

享保尾立と刻字

                  久伊豆神社(埼玉県越谷市越ヶ谷1,700)


江戸の狛犬は尾が背なかに付いた「尾付き」と尾が立った「尾立」、そして江戸石工が創り出した「尾下がり」に分類される。
尾下がり狛犬は小野照崎神社(台東区下谷二丁目)に居る明和元年(1764)の狛犬が元祖と云われている。
では狛犬の尾はいつ頃立ったのだろうか?
一対の
片方だが尾が立った例としては富岡八幡宮の享保十二年(1727)、阿吽とも尾が立ったのが須賀神社(新宿区須賀町)享保十三年(1728)の狛犬。
だが、
それより古い尾立狛犬が埼玉県越谷市越ケ谷の久伊豆神社にいる。


銘はかなり読みづらいが「享保七歳(1722)奉納 寅九月」で、右側の阿像は尾付き、左側の吽像が尾立になっている。


その他の片尾立には牛島神社(墨田区向島)の享保十四年(1729)、鳩森八幡神社(渋谷区千駄ヶ谷)の享保二十年(1735)が居る。

台座の面を平らにすることを「石を磨く」といいますが、石面を磨いて刻字するという画期的な方法が始められたのも享保年間であるという。

久伊豆神社の台座面(写真左)は手を加えていない凸凹のままだが、須賀神社や牛島神社ではいくらか読みやすくなってきている。
鳩森八幡神社の享保二十年になると石面を磨いて刻字しています。

これらの例から享保年間は狛犬史にとって重要な変革のあった年代といえます。


                                    (写真・文;山田敏春)