これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.38〜 2008.11

夫婦連名の狛犬 

八幡神社(栃木県小山市間々田


江戸時代に神社仏閣に奉納された狛犬には寄進者の名が彫られていますが殆ど男性名で、女性が寄進者となる例はかなり少ないようです。
女性名の銘文をあげてみましょう。

 板橋区双葉町の狛犬には「女世話人」として「玉や 長四郎 妻」「大塚や 源右衛門 母
 江戸川区東葛西の香取神社の狛犬(吽像)の銘には「
小松川 金子佐兵衛養女 さえ
 墨田区立花の吾嬬神社の狛犬には男名と一緒に「
山さきや はつ」「つの国や いそ

とあり、ほかに講中の奉納で「女講中」や「女五拾四名」などというのもあります。
 


江戸時代は男社会、女社会というものが存在した事は周知の事実で、男女の交わりを禁ずる庚申講などは最も知られたものです。
そんななかで夫婦連名で奉納された狛犬はあるのだろうか?

東京23区の資料では、夫婦連名での狛犬奉納は大正初期から見られますが、江戸期奉納は見あたらないようです。
私が「江戸期夫婦連名」の狛犬として唯一見たのが、栃木県小山市間々田の八幡神社です。
像高45cmほどの狛犬の台座に、

  「奉納 安政三辰三月(1856) 嶋屋留五郎 内 のち」と刻まれています。

内(うち)は妻を指す言葉ですが妻より粋で温かい感じがします。

                                   (写真・文 山田敏春)