これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.39〜 2008.12

新撰組の墓碑を刻んだ石工

 

西向天神社(新宿区新宿6-21-1)


西向天神社の拝殿前には宝暦12年(1762)に奉納された狛犬がいますが、今回紹介するのは石段途中にいる狛犬です。
耳などに破損がありますが、優しげな狛犬です。
台座の銘は建立年が「弘化三午年六月吉日納之(1846)」、石工が「牛込原町 石工
平田四郎右衛門 細工人喜三郎」と刻まれています。
 


二人の石工は二年後の嘉永元年(1848)に新宿区神楽坂の善国寺の虎も手がけています。
奉納は町火消しの「お組」のようです。
江戸では前年の1月とこの年1月に大火があり、狛犬奉納は火伏せの願いが込められているようです。
 

                                   

時は移り明治9年5月に「近藤勇宣昌・土方歳三義豊 之墓」と刻まれた大きな墓碑が現在のJR板橋駅前(北区滝野川7−8−10)に建立されます。

石工名は「牛込馬場下横町 平田四郎右衛門」、
発願主は永倉新八改め杉村義衛となっています。

永倉は 新撰組副長助勤・二番組隊長として活躍した人物です。
永倉が四郎右衛門に石碑制作を依頼した経緯は判りませんが、四郎右衛門が狛犬を彫っていた頃の番地を見ると、近藤勇の試衛館があった市谷甲良屋敷内(市谷柳町辺り)とはごく近い距離にあります。
永倉は石屋を覚えていて石碑を頼んでのではないか、とそんな事を想像してしまいます。

なお近藤勇の名は宣昌(よしまさ)ではなく昌宣(まさよし)だといいます。
石工の彫り間違いか、それとも意味があるのか、そんなことも話題になっています。

(写真・文 山田敏春)