子犬の重み〜子取り狛犬
玉を持った狛犬を玉取狛犬、子犬を持った狛犬を子取り狛犬と言います。 では、狛犬に子犬が一緒添えられるようになったのはいつ頃からでしょうか? 定かではありませんが、現存する東京の狛犬では北野天神〜旧・牛天神(文京区春日1丁目)の文化6年(1809)の子取り狛犬が最も古いと思われます。 江戸時代の記録である武江年表によれば「文化3年(1806)の4月から5月にかけ江戸及び近国に疱瘡大流行、小児多く死す。」とあります。 多くの子供が流行病で亡くなった事がきっかけで、子犬を守り育てる「子取り狛犬」が造られたような気がします。
子取り狛犬は見た目にも微笑ましく心が和みますが、子犬の表情、居場所や姿には石工達の様々な工夫が感じられます。 親の足元で廻りを伺うような子犬、仰向けに親の足にじゃれている子犬、そして親の背中でタテガミの毛束を咥えている子犬、実に生き生きとしています。 私が特に感じ入ったのは背中の子犬を支えている親犬の尾のゆがみ加減であろうか。 小さな子犬にも命の重さがあるのだと、教えているようです。 (写真・文 山田敏春)