石獣と称する狛犬
都営三田線本蓮沼駅から中山道を400mほど下ると、右側に蓮沼町の鎮守氷川神社があります。 資料によれば、当社は初め荒川沿いの浮間舟渡辺りに勧請されたそうですが、度々の洪水で押し流され、そのたびに再建されて「十度の宮」とも呼ばれていました。 享保十三年九月(1728)に名主の新井家は水禍を避け、て鎮守の氷川神社と別当寺の南蔵院と共に現在の場所に移り蓮沼村を開きました。
素朴な拝殿の前にずんぐりした狛犬がいます。 自然石の台座の裏面に刻字がされ「昭和九年十一月(1934)工学博士新井栄吉」、石工は当所の石幸こと村田幸太郎で、江戸の名工村田清八の子孫です。 工学博士の新井栄吉氏は名主の新井家の一族のようです。 さらに奉納理由が書いてあるらしいのですが剥離していて読めません。 最後の「奉献 石獣」の文字だけが残っています。 石獣とは変わった言い方です。 狛犬の異称には様々なものがありますが、時々見るのが「高麗犬」「駒犬」、変わったものとして 「細犬」「降魔狗」「古末以奴」などがあります。 物々しい石獣と称する狛犬ですが、二頭身で見た目にも面白く、ポケモンに加えたいようなキヤラクターです。
(写真・文/山田敏春)