広重のレリーフ
船橋太神宮(千葉県船橋市宮下5)
東部野田線船橋駅から船橋太神宮へ行く途中、海老川に架かった海老川橋があります。 由緒によればこの橋が昔、船を複数浮かべて上に板を渡して通行していた、いわゆる船の橋で船橋の地名の発祥の地だといいます。 橋の欄干には船橋太神宮を描いたブロンズのレリーフがはめ込まれていて、近寄って見ると狛犬がいます。 さらにもう一枚構図を反転させたタイルのレリーフもあります。
どうやら明治12年(1890)に出版された三代広重の「成田土産名所尽・船橋駅太神宮」の錦絵を写したもののようです。 西の参道を描いたものですが現在狛犬は居ません。 年代的にみて、おそらく表参道の中程にいる狛犬がレリーフに描かれた狛犬と思われます。
奉納は「本宿」「横宿」「宮之内」「中野木村」の人達。 世話人は「當所五日市」の五人で地元の氏子のようです。 阿吽がハッキリしませんが双方に子犬がいます。 向かって右の台座には奉納年の明治十四年七月吉日(1881)と石工金子勘次郎、左の台座には石工金子長十郎の名があります。 それぞれ一体ずつ刻んだのでしょう。 子犬を撫でていると、宮参りの親子が幸せそうに通ります。 この狛犬さんはこんな光景を数限りなく見続けてきたのでしょう…その度に健やかに育てと願いながら。
(写真・文/山田敏春)