菊の紋狛犬
荻窪八幡神社(杉並区上荻4-19-2)
安政2年10月2日亥刻(午後10時頃)江戸は大地震に見舞われますが、その2ヶ月前に奉納された狛犬。 奉納者の扇屋の文吉さんは無事だったのだろうか? 被害は江戸の東側(震度7)が大きく、赤阪一ッ木町辺り(震度4)は比較的被害が少なかったようだが…。
狛犬は尾の下がった江戸タイプで阿吽ともに子犬がいます。 親の足元で安心仕切った表情がとても良く、口元の小さな牙が可愛く、思わず突っつきたくなります。 赤阪一ツ木町と云えば赤阪氷川神社の氏子の町だが、文吉さんは荻窪村の生まれだったのかも知れません。 注目は台座に刻まれた十六葉の菊の紋です。
正式には十六葉八重表菊花紋と云いますが、荻窪八幡神社は応神天皇を祭神としていますから、当然とも思えます。しかし、現在ではあり得ないものです。 菊花を好まれた後鳥羽上皇により皇室の紋として用いられた菊花紋は、江戸時代においては武家・神社仏閣・役者・商人らの間で人気があり乱用されていたようですが、明治元年にその使用が一般においては禁止されました。 台座銘 安政二乙卯歳八月吉祥日(1855) 奉 献 赤阪一ッ木町 扇屋文吉 石工名 なし
(写真・文/山田敏春)