これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.53〜 2010.2

新吉原トリオの狛犬

                 白髭神社(墨田区東向島3-5-2)

白髭神社(墨田区東向島)の祭神は猿田彦大神。
天孫降臨の神話から<遊郭や料亭などではお客を案内して来てくれる神>として信仰されました。 

狛犬は松葉屋八百善駿河屋の三人によって奉納。

遊郭松葉屋は遊女瀬川を抱えていた店として知られ、主人は宝暦中期から代々半左衛門を襲名しています。

千住の素盞雄神社の狛犬(写真左)と虎ノ門の金比羅神社の銅鳥居には
「新吉原角町 松葉屋半蔵」とあり、半蔵が通り名と思われます。

素盞雄神社(荒川区南千住) 文化5年戊辰歳6月吉日
奉納 新吉原角町
松葉屋半蔵

八百善こと八百屋善四郎は新鳥越町二丁目で八百屋を営んでいて近所の寺に精進料理の仕出しも行っていたが、文化年間に本格的に仕出し料理屋を始めてこれが成功。
文政の始め頃には馬鹿げたほど高価な料理屋として大評判となる。
例えばお茶漬が一両二分(約10万円)もしたという

また八百善は毎年、一族郎党、友人、芸者衆などを引き連れて江ノ島詣でをしていたと云われ、
入り口の銅鳥居(写真上)には、「
松葉屋半蔵 八百屋善四郎 駿河屋市兵衛」の名があります。

駿河屋は仲ノ町の茶屋です、新吉原の大門を入ると真っ直ぐな通りがあります。
これが「仲ノ町」と呼ばれ、左右に茶屋が並んでいます。
駿河屋は七軒茶屋と呼ばれた別格の茶屋の一軒で、入口近くの右側にあったようです。

吉原に来たお客はまず茶屋駿河屋に上がり、そこから松葉屋に連絡、遊女を呼んで貰います。
そして
八百善から料理や酒を取り寄せ、ひとしきり楽しんでから、松葉屋へ移って一晩過ごす事になります。
お金がもの凄くかかるようになっている。
このお金の一部が狛犬になったのだろう…それも、ほんの一部が…

狛犬の銘 文化十二乙亥年二月吉日(1815)
     奉納 御寶前 松葉屋半左衛門 八百屋善四郎 駿河屋市兵衛
     石工 神田今川橋 六兵衛明貴



                                  (写真・文/山田敏春、写真/阿由葉