これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.54〜 2010.3

千葉県最古の狛犬

                飯尾寺(葉県長生郡長柄町山根821)

正和二年(1314)開山という千葉県長柄町の日蓮宗飯尾寺は、中世の武士飯尾氏の私的な不動堂で鎌倉時代後期の作と云われる木造不動尊座像が祀られている。
ここに千葉県最古の銘を持つ狛犬が居る。

山門脇に文化財指定狛犬一対の標柱があり、急勾配の石段を上ると文化十年に建てられた不動堂の前に小振りな古い狛犬がいる。
高さは約61cm、胸に銘が刻んであるがかなり風化していて上半分ほどしか読めない。
房総石造文化財研究会、平井穀氏調査によれば
  「
寛文拾年庚戌正月廿八日(1670)
  「
奉造 不動明王祈願成就所
  「
上総國長柄郡山之根内飯尾村

と刻まれているという。
願主名などもあるがこれも判読は出来ない。なお二十八日は不動参りの祭礼日である。

東京に現存する最古の狛犬は目黒不動尊のもので承應三年(1654)の建立
飯尾寺のはそれから16年後の建立である。

この狛犬を見て驚くのは目黒不動尊の狛犬の足、尾、お尻との類似点である。
さらに体には同じく丸紋まで刻まれている。


飯尾神社の尾とお尻

目黒不動尊の尾とお尻


       飯尾神社の背中の丸紋


目黒不動尊の背中の丸紋

当寺には狛犬が奉造される6年前の寛文四年(1664)に、地元の鋳物師によって梵鐘が奉納されているので経済的には豊な地域だったと思われ、また信仰も盛んであったといえます。

江戸時代になって関東では不動尊信仰が大変盛んになりましたが、その筆頭はやはり目黒不動尊で、武江年表に「寛永六年六月上旬(1629)より目黒村不動尊、所願成就するよしにて、にわかに江戸中、老若男女群集す。」と書かれています。
山根村でも江戸の評判を聞いて目黒不動尊へ講を作って参拝したものと考えられ、それが目黒不動尊の狛犬に似た狛犬を奉納することに繋がったのではないだろうか



                                      (写真・文/山田敏春)