これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.66〜 2011.3

石工 庄次朗

                   牛島神社(墨田区向島1-4)


牛島神社の「撫で牛」。
墨田区の説明文や資料によれば文政8年頃に奉納されたものといわれていますが、
その根拠は左側に建てられている石碑にあるようです。

石碑の銘に「牛奉納」。
下方に93名の商人や職人たちの名に続き
 「
山谷町 石工 庄次郎
 「苗場町 石工 五良兵衛」とあり
「願主 北割下水 三河屋安兵衛 同 清助」
裏側に「
文政八酉年霜月中旬」と刻まれています。
西暦で1825年の11月15日です。

撫で牛は自分の体の悪い部分と同じところを撫でる事により病が癒えるとされ、これはお寺の「びんずるさま」と同じ信仰形態と云われています。
それから持参した赤い涎掛けを牛にかけ、それを持ち帰って幼子にかけると丈夫に育つと云われていますが、これは疱瘡除け(天然痘)がもとと思われます。
古来より牛飼い達は疱瘡にかかっても軽く済むという事が知られていた為でしょう。
牛を描いた絵馬も同じ意味で奉納されます。


もう一つ商家や遊廓などでは縁起物として陶器、青銅、木などで作られた臥牛像を祀り、家内安全や商売繁盛を願ったそうです。
これも撫で牛と呼ばれ、良い事があれば牛像の座布団を増やしたといいます。

思うに牛島神社の撫で牛は千客万来・商売繁盛を願って奉納されたのではないでしょうか。
なお、牛の作者「石工庄次郎」は同境内にある文政11年(1827)建立の獅子山の作者「東都彫工伊那庄次郎正継」と同一人物のような気がします。


                                    
(文・写真/山田敏春)