これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.71〜 2011.8

元禄大地震と狛犬

                 八幡神社(横浜市金沢区寺前1-10)


元禄16年(1703)11月23日午前2時頃、野島崎沖で震度8を超す地震が発生、九十九里浜と相模灘の宿場町は津波に襲われた。(元禄大地震
特に被害が大きかったのは小田原で、城の天守閣と本丸が崩れた。
そして鎌倉の鶴岡八幡宮へも津波が押し寄せたそうだ。
三浦半島では震度7を記録し、最大で8mほどの津波に襲われた。
金沢領の入江も津波により堤防の決壊などがあった。
元禄大地震は今年3月11日の東日本大震災・大津波を期に大正12年の関東大震災と同じ海溝型地震として注目されている。
更に先頃三浦半島の活断層についても発表が行われた。


元禄大地震と同年同月に奉納された狛犬が横浜市金沢区寺前1丁目の八幡神社にいる。
 
銘は狛犬と一体になった足座の

  前肢下に八幡大菩薩(阿弥陀如来)を表す梵字に続いて「八幡宮御神前」

  正面に「元禄十六癸未十一月吉日(1703)施主町屋村」

  裏面に「新奉造立獅子像二疋 武州金沢領惣江氏子中」

とある。
「惣江」は金沢領内の入江という意味だと思われる。

狛犬は造型から元禄期より後の作ではないかと言われているが、考えられるのは
先代の狛犬が地震か津波で破損したものを後日新しく造り直し、施主にとって替える事の出来ない大切な奉納年月だけを元のままに彫り込んだのではないかと言うことである。
現に昭和製の岡崎狛犬に安政五年(1858)の銘を刻んだ例もある。




(文・山田敏春/写真・阿由葉)