これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.76〜 2012.1

コピー狛犬

                  白山神社(練馬区練馬4-2-3)


「人形は顔がいのち」という宣伝文をもじって「狛犬は尾が命」と言った狛研先輩の名言がある。
背付、尾立ち、尾下がりと三つに分類された尾は造られた時代を推察する重要なポイントである。


台東区下谷の小野照崎神社の狛犬は初めて尾を下げた狛犬、として知られている。

造られたのは明和元年(1764)で
 石工は棟梁石屋長八と二人の弟子である。

極めつきは斜め後ろから見たときの尾の深いうねりの見事さで、

この狛犬に依って江戸の狛犬は美しさを手に入れたと云っても過言ではない。


その元祖尾下がり狛犬のコピーが練馬の白山神社にある。

銘は
 「當村願主 ?本惣兵衛」
 「文政元戊寅季九月吉日(1818)」
 「江戸浅草山谷町 石工平次郎」
 と読みずらい草書体で刻まれている。

コピー狛犬は元祖の尾を一生懸命に模しているが、表情は少しゆるく、目はわずか上を向いた空目遣いになっている。

狛犬を彫った石工平次郎の住む「浅草山谷町」は現在の吉野通り沿いの東浅草二丁目及び清川一丁目あたりである。
浅草山谷町から千住方面に向かうと紛らわしい山谷浅草町があり、この町境の十字路を左に折れると新吉原の大門に行き着くという昼夜を問わず人が行き交う地域だった。

なお牛島神社の撫で牛を彫った庄次郎も山谷町に住んでいた。


(文・写真 山田敏春)