これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.77〜 2012.2

五月初午の狛犬

                  大國魂神社(府中市宮前3-3-1)


大国魂神社 随身門前の狛犬は、

  府中宿の宿屋である新宿東屋の平吉番場宿箱屋の政吉

によって奉納されました。

建立年は「天保十己亥歳五月初午(1839)」と刻まれていますが、これは5月の3日を指します。

江戸期の例大祭は4月25日に神主が品川貴船明神社(現・荏原神社)へ行き垢離で身を清め、神水を汲んで来て祭礼日の5月5日まで境内から出ずにそなえます。

そんな中、馬市が5月3日から開かれ、夜には競べ馬(くらべうま)が行われます。
競べ馬とは朝廷へ献上する馬を選定する為に馬場で走らせた事に由来します。
因みに日光東照宮の初代の神馬はこの競べ馬で選ばれたものです。
由緒ある馬市も八代将軍吉宗の時代の享保年間には江戸に移されて府中宿の馬市は廃止さました。

その後、馬市の再興は府中宿にとって、経済活性化の為の悲願であったらしく、幕末までに数度再興されましたが、何れも数年を経ずして廃止されたと言います。
天保元年には4度目の馬市が再興されました。

そして天保10年に馬市再興10周年を記念するように狛犬が奉納されたのです。
だがこの年再び馬市は廃止された模様です。


かくして時は移り昭和8年、何の因果か目黒から東京競馬場が移転してきました。
かつては馬市の宿場町であった府中に、紙の馬を買う為に人々が集まっています。


            奉納 天保十己亥歳五月初午
               
府中番場宿 箱屋 願主政吉
               
府中新宿  東屋 願主孝吉

(文・写真 山田敏春)