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平成10年頃だろうか、鷲宮神社に行って拝殿の左脇にある門内を覗くと神崎神社と書かれた提灯と狛犬が見えるので、せめて奉納年だけでも知りたいと社務所に行って尋ねると、なんとお祓いもせず安易に見せて頂けるというので、宮司さんの案内で中に入った。
宮司さんと台座の銘を読むと奉納年は「安政三年丙辰正月吉日」だが安政の政の字は「正」の下に「攵」の字がある異体字だ。
奉納者は「願主 埼玉郡 加藤文吉」でその他多数の名が刻まれている。
残念ながら石工名はなかったが立派な江戸狛犬だ。
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安政2年10月2日に起きた安政大地震、江戸では震度7、武蔵国では震度4といわれている。
その大震災からわずか3ケ月ほどしか経っていない安政3年の正月、江戸ではまだまだ大きな余震も度々起きていて不安な世情の中での狛犬奉納は、国土安穏・家内安全などを祈念してだろうか。
(文・写真 山田敏春)