狛犬は双方とも前肢が無いが保存状態はまあまあだ。
銘は 胸に 「奉奇進」
背中に「元禄十六癸未年十一月吉日(1703)」「鷲宮大明神廣前」
「二求願各各成就所」「再拝早河佐康」
と彫りつけてある。
奉納月の十一月吉日とは酉の日を指す。
解らないのが「二求願各各…」の「二(じ)」である。
漢和辞典に依れば「二=次(じ)」であり、次は「やどる=宿る」とある。
つまり鷲宮の大明神がおわす所と解釈するのだろうか。
「求願」は仏教用語と思われるが狛犬でお目に掛かるのは初めてだ。
続く「各各」だが本来は「各」の一字で「おのおの」と読むのだが「各=かく」と区別するために二つ同じ字を書く、今は「各々」と書く。
もう一つ奉納者名の前にある「再拝」だが、これも初見である。
手紙の最後に相手へ敬意を込めて書く言葉だそうで「頓首再拝=とんしゅさいはい」が元で意味は、地に頭がつくほど深い敬礼、二度おじぎをするほどの敬意、とされ奉納者の深い敬意や謝意を感じる。
因みに元禄十六年十一月二十二日の夜八時頃元禄大地震が起きているが狛犬に被害が無かったとすれば再拝である。
(文・山田敏春、写真・阿由葉)
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