これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.88〜 2013.1

南千住の獅子〜素盞雄神社

                素盞雄神社(荒川区南千住 6-60-1


              いつ見てもほれぼれする狛犬がいる。
              素盞雄神社の獅子山もその一つ。


石彫で風になびくが如くの尾というものは、石の強度や石工自身の技量に依って形に制約を受けてしまいます。
良い石を見抜く目と良石、そして石の強度を見極めて極限まで彫る事の出来る技術力が無ければこの獅子の尾は実現する事は無かったでしょう。

残念ながら造られた年代や奉納者については不明。
だが神社には、明治時代に狛犬を彫った石工が乞食の姿で参拝客の評判を盗み聞きしていたという話が伝わっている。何とか手がかりはないかと獅子山の後方を見ると穴があり、奥に銘板が埋め込まれていて字も幾つか見えるが下が埋もれていて読み切れない。

「奉納」「□輪」「三河」の字がかろうじて見える。

資料には「石獅子一対 五ヶ所氏子中奉納 南千住・北千住・三河島・町屋・三ノ輪」とだけあり奉納年についての記述はない。

しかし地名から大まかではあるが年代の推定は出来る。


江戸時代千住大橋の手前の荒川区側は「千住南組」、渡った足立区側を「千住北組」と称し、明治21年まで町名としていたが、明治22年から千住南組を南千住と改称、千住北組は無くなった。
南千住という呼び方は明治22年以降のもので、銘板にその町名があるということは獅子山も明治22年以降に造られたと考えるのが妥当だろう。

                               (文・山田敏春、写真・阿由葉)