これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.91〜 2013.4

高遠石工の狛犬〜白岩山長谷寺

               白岩山長谷寺(群馬県高崎市白岩町448)


ネット上では知られている、坂東札所第15番白岩山長谷寺(ちょうこくじ)の狛犬に会って来た。

姿は碓井峠の胴長狛犬や坂本宿の享保8年(1723)の古狛犬に通じるものだ。
入口には高遠石工の保科徳次郎由清が寛政10年(1798)に造った灯籠、参道中程には
信州伊那の石工常蔵が文政5年(1822)に造った多宝塔がある。




阿像の石の色の違いに注目!


狛犬は極彩色に彩られた向拝下にいる。
阿像の台座正面には
  「
延享三年丙寅十月吉日(1746)」の銘
横面には
  「
再造立発願主 星野善太夫 長谷河熊次郎 勧進助力村々馬持中文政四年辛巳十二月下院(1821)」
とある。
更に裏面には
  「願主本郷村 清水忠兵衛 
信州高遠藤沢村 伊藤喜平治 作之」の銘
吽像台座正面には
  「二十四村 万人講」
とある。


双方の台座の石と吽像は同じ石だが阿像だけが石の質と色が全く違うのが2つの年代の経緯を解くヒントになりそうだ。
狛犬は延享3年に高遠石工の伊藤喜平治が造ったものであるのは間違いがないと思う。
資料によれば喜平治は狛犬を彫る10年前の元文元年(1736)に高崎に来て宝篋印塔を造っているが75年後の文政年間頃にその名は見当たらない。
再造立(文政4年)された狛犬を彫ったのはこの時期長谷寺で仕事をしていた伊那の石工常蔵かも知れない。



                                     (写真・文 山田敏春)


 ※ 高遠石工については、こちをも参照下さい。