狛犬の願い〜秋葉神社
秋葉神社(新宿区新宿1-8)
四谷消防署新宿御苑出張所の隣に火伏せの神を祀る秋葉神社がある。 火伏の神と火を消す消防署、うまい洒落のような取り合わせと言える。
その拝殿前には思わず微笑みが浮かぶ親子狛犬がいる。 銘は「昭和19年11月(1944)」「奉納 田中靖久 西孝太郎」 残念ながら石工名は不明である。
両方に子がいる、右の子は親のあごひげを引っ張ってじゃれている。 左の子は親に抱かれながら手に抱えた玉をまるで金メダルをくわえるスポーツ選手のようくわえている。 生き生きとした子の姿を主題にした癒しの逸品である。 戦時中に火伏せの神社に奉納された狛犬、戦災にあわないようにという願いが込められていたのだろうか?
東京が初めて空襲されたのは昭和17年4月18日である。 翌18年は無いが19年11月から本格的な空襲が始まり20年8月15日まで続いて終戦となった。 果たして奉納者の2人やその家族は無事に終戦を迎えられたのだろうか。 コンクリートで再建された拝殿に額が奉納されているが、銘に「昭和36年6月 祝九十歳 奉納 西孝太郎」とある。西さん本人は無事であったようだ。 ところでこの狛犬にはモデルがいる。(写真下)
それは同区内の歌舞伎町2丁目の鬼王神社に明治35年(1902)に奉納された狛犬。 さすが本家だと言わしめる作品となっている。