家光と降摩狗〜牛天神社(現・北野天神)
北野天神(文京区春日1-5-2)
江戸名所図会の牛天神社(現・北野天神)の記述に 「降摩狗 社檀に収。鎌倉仏師運慶の作なりといふ。 往古、大猶院、禁閥にありしを江戸の大城へ移させたまひ、その後水戸黄門光圀卿に賜せられしを、 讃州の太守頼常君、当社崇敬厚く、元禄五年壬申、社檀重修の頃寄付せられといへり。」 とある。
つまり、京都御所にあった運慶作の降摩狗を家光が気に入って江戸城へ持ち帰り、その後水戸黄門光圀へ贈った。 その後光圀の実子で讃岐高松藩主の松平頼常によって元禄五年(1692)、牛天神社の修復工事の際に寄贈されたというのである。
ではいつ頃狛犬は江戸に来たのだろうか? 家光が上洛の為江戸を立ったのが寛永十一年(1643)6月20日、京都御所に参内したのは7月18日で、この時朝廷に様々な贈り物をしたが、御所内でたまたま目にした降摩狗を京土産として無心したと思われる。 家光の狛犬好きを裏付けている話だ。 この降摩狗は現在も北野天神社の拝殿に置かれ琥珀の狛犬と呼ばれている。 運慶作かどうかは何とも言えないが、右の像は口を開き、タテガミと尾は巻き毛、左の像は口を閉じタテガミと尾は直毛である。 顔は大きな唐獅子顔ではなく、優しい眼差しをした小顔というのも珍しい。 因みに降摩とは悪魔を降伏させる事である。