久美子の 狛犬散歩
 その(15)
神楽坂界隈2・善国寺〜しなやかにキメる
を低く背中を丸め、しなやかな威嚇ポーズのこの虎。
足が長いので立ちあがったらかなりの大きさになりそうだ。
鎮座している台座も大きいので、いつも狛犬をつい見過ごしてしまう人でも気がつかない人はいないだろう。
神楽坂の最も賑やかな通りに面し、江戸の三毘沙門として信仰されている善国寺は参詣の人並みが途絶えることがない。
毘沙門天の神使はトラだそうだ。
台座での年号確認はできないが円丈師匠によれば、伝聞で江戸末期の嘉永元年の作。
工は違うが、姿・形は広尾天現寺の虎ときわめて良く似ている。
天現寺の虎の尾が下がって地面を這うのに対し、この虎の尾は体に巻きつくように上に上がっているという申し訳程度の違いがあるのみだ。
やはり建立が11年古い天現寺の虎と同様のモデルを基礎に作り上げられたものなのか、それとも天現寺の虎が素晴らしいのでこれをまねて作られたものなのか。
いずれにしても無関係ではなさそうだ。
アドバイスをしてくれた山田さんの言を借りれば
「石工にとって真似されることは自慢であり真似をしてより良いものを作ることも石工の自慢だった時代」の産物かもしれない。
上記写真の台座レリーフ…そのもう一段下の台石にはこの几(き)号マークが刻まれている。

この項のみ(阿)

務所によれば、虎は戦火に焼かれ剥離しバラバラになってしまったが、シリコンを詰めて現在の形に修復したものだそうだ。大事にされているようでうれしい。

善国寺(東京都新宿区神楽坂5-36)

大野久美子 2004年第45号より