〜イヌ(2)  地主神の和犬
真言宗・天台宗は、開山以前の地の神〜地主神を祀る。
成田不動・目黒不動も地主神を祀っているが、その地主神の神使と見られる和犬像がある。
畏(カシコ)まって控える和犬

 成田不動の「清瀧権現堂 妙見宮」には、寺の開山以前からの「成田の地の神」が祀られており、目黒不動の奥山(奥之院)には不動明王の本地仏 大日如来と共に、開山以前からの地主神として「大行事権現」が祀られている。
弘法大師の高野山の地主神は丹生・狩場明神であり、比叡山の地主神は大山咋(オオヤマクイ)神であ
る。
 地主神を祀るのは、その土地に進出して寺社建設などを行なうに当たって、従来からの勢力や宗教と折り合って、建設地の獲得や労力の確保なども含めて協力を得るための「必須の方策だった」とも思われる。
 古来からその地を護ってきた地主神の神使としては、関東地方では山の神、大山祇命(オオヤマウジノミコト)の神使であるオオカミがすぐに想定される。

 成田不動・目黒不動には、その地主神の神使と見られる和犬像がある。
しかし、地主神の神使とはいえ、寺社の境内に置くという制約から、オオカミを和犬に似せて
和犬風に。また、首輪をした和犬に変形して造られ設置された可能性もある。

ここで紹介する成田不動と目黒不動の像は、境内の他の「和犬」像とは設置場所、設置のされ方、像の雰囲気(形)などが異なっている上、地主神の神使として、明らかに畏(カシコ)まって控えている。
◆「成田不動・新勝寺」(清瀧権現堂・妙見宮前)
回廊の縁先下に控える和犬
縁先下で低い台石に蹲踞(そんきょ)して前方をにらみ警護している。
また、尻尾はのり巻き状に、耳は小さく固まったようにつくられ、
和犬とは異なるように見える。(唐犬?)

建立年;正徳元年(1711)

◆「目黒不動・瀧泉寺」(前不動堂前)
この像は、下を向いてうなだれているのではない。
あきらかに頭を下げて畏まって控えている。
このようなポーズの像は和犬にかぎらず、他の像でも見たことはない。
また、はっきりではないがオオカミ像の特徴であるあばら骨表現もあるように見える。

                建立年;不 明
                石 工;神田佐久間町 新八
                願 主;神田■屋敷  勘太郎

この像は文久2年(1862)のものとする優れた研究調査報告がある。
liondogさんのWeb ページ「狛犬探偵団」第1章参照