狼-3 武藏・奥多摩地方のオオカミ
(B) 〜オオカミ 奥多摩山中の狼 |
奥多摩山中の狼は、秩父や他の神社と異なって社殿はなく、
登山者がたまに立寄るだけである。 奇妙だが、心温まるオオカミ像が、奥多摩山中の小さな祠の前にかしずいている。 |
秩父地方のオオカミ像は、立派な社殿を持ち、遠方からも多勢の人が参拝にくるような神社にあるものも多い。
これに引き換え、里から2時間近くも入る、この奥多摩山中のオオカミ像は、社殿はなく小さな祠の前に置かれている。 近村の人に守られているが、日常はハイカーや登山者が気まぐれに立ち寄るだけである。 祠(社)前のオオカミ像は、オオカミにも犬にも見えない奇妙な像だが、親しみがもてる、おおらかな像である。 「長い顔、耳は立耳で、口は耳の近くまで大きく裂け、尻尾の表現は抑えられ、胴長な感じで、小柄な」これらのオオカミ像は、秩父地方などでは全く見かけないタイプで、奥多摩山中、特有の像である。 このうち年代の判る大嶽神社の像は宝暦9年(1759)の奉納で、秩父最古といわれる秩父大滝の三峯神社の像(文化7年・1810)より50年はさかのぼる。 |
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この神社は奥多摩の大岳山の山頂直下にある。
社殿は崩壊寸前だが、麓の白倉には里宮があって、「大口真神」のお札を頒布している。 ここのオオカミ像は、宝暦9年(1759)4月の奉納で、秩父・武蔵では最古の像である。 この像については、こちらもご覧下さい。 東京都檜原村白倉(大岳山) |
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鑾野御前神社は御前山の湯久保尾根、山上集落である湯久保集落の上方30分ぐらいのところにある。
祠前に、可愛らしい、癒し系のオオカミ像が向き合って置かれている。 数体の小さいオオカミ像も奉納されていて、全体ではファミリーに見える。 祠が石灰岩の大きな岩峰の下にあるので、背後に覆いかぶさる石灰岩が溶けて液がかかり、 どの像も白い上薬をかけたようになっている。 東京都檜原村小沢字湯久保(御前山) |
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戸倉三山の一つ、臼杵山北峰に臼杵権現がある。
この祠の前に犬ともオオカミともつかない奇妙な像が左右一対ある。 左像は破損していて、頭部が石の上に乗せてある。 この像を猫とする説もあるようだが、この像は大岳山の「大嶽神社」、湯久保の「すず野御前」の像と共通する系統のもので、お犬さま(山犬=オオカミ)信仰に基づくオオカミ像と見たほうが、自然である。 東京都檜原村下元郷(臼杵山) |
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この社は、御前山の湯久保尾根の下にある北秋川の上流沿い、笹久保の崖上にある。 境内に、三つの祠と二つの碑を中に挟んで、左右にオオカミ像が置かれている。 左端の吽像は、鼻が欠けてはいるものの、ほぼ原形を留めている。 しかし、右端の阿像は、後足・尾・腰の部分しか残っていない。 欠けた上半身を探してみたが見当たらない。 祭神と縁のないおオオカミ像が置かれている経緯は不明だが、武蔵御嶽神社の影響なども受けたお犬様信仰に基づく像と推測される。 かつて御嶽社があったか、近隣の社が合祀された際のものかもしれない。 |
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左像の台石に「宝暦十天(1760)六月八日」の銘があり、その前年に奉納された大岳山直下の大嶽神社のオオカミ像によく似ている。
奥多摩山中、独特のオオカミ像である。 耳は小さく立ち、尾は小さく、蹲踞する。アバラ表現はない。 参考資料 「桧原村史」〜宝暦のオオカミ 東京都西多摩郡檜原村字樋里4529 |