狼-(5) 〜秩父・武蔵の オオカミ風にされた和犬
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秩父・武蔵(奥多摩)では、本来は和犬像であるべきものが、
オオカミ風にアレンジされている。 それは、この地が、お犬さま(オオカミ)信仰の盛んな地域だからだと思われる。 |
武野上神社の祭神は水神、罔象女神(ミヅハノメノカミ)。
通称「丹生(ニブ)様」または「丹生明神」と呼ばれ、本野上・中野上の鎮守とされた。 この社について、長瀞町史「民俗編」に次のように載る。 「総持寺を開山した心地覚心大和尚が、鎌倉時代の中期紀伊国(和歌山県)高野山に参籠して満願のみぎり、この野上地方の旱魃(かんばつ)を救うために、大和国(奈良県)吉野郡丹生(ニブ)川上の中社に鎮座する、水神慈雨の罔象女神(ミズハノメノカミ)(丹生明神)のご分霊を頂いてかえり、この地に祭った。」のがこの社の礎とされる。 |
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このように、この社の拝殿前の像はオオカミではなく和犬の筈である。 それが、尻尾、牙、アバラの部分などにオオカミの特徴がみられる。 秩父地方がお犬さま信仰の中心であることから、 本来、丹生明神の神使である和犬が、「オオカミ風にデフォルメ」され、 オオカミではないのに、「お姿入りのお札」にまでされたと思われる。 |
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しかし、この社の像は…
秩父地方のオオカミ像には見られない、子犬が母犬に甘えているような子連れの像であることや、 穏やかで、アットホームな雰囲気が感じられることから、 和犬の面影もある。 奉納:昭和17年4月(1982) 埼玉県秩父郡長瀞町大字本野上1,114 |
常福院龍学寺は、別名「波切不動」と呼ばれていた。「波切不動尊」は、弘法大師が、唐から帰国の途中、激しい嵐にあって遭難の危機に至った際に、一刀三礼して彫った不動明王で、祈ると、大火炎を発し、利剣で波を切り裂いて船を安全に導いたという。全国の波(浪)切不動の本山は、高野山南院にある。このように、「波切不動」は弘法大師と密接な関係にある。
高野山の地主神でもある丹生・狩場明神は、弘法大師並びに密教の護法(守護神)ともされ、弘法大師の関連する寺社などにも、丹生明神の神使の和犬が置かれるようになったと思われる。 |
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本殿前の左右に、赤い首輪をし、胸に白と黒の鈴をさげた和犬の像がある。
丹生・狩場明神の和犬である。 |
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この和犬は正面から見ると和犬だが(写真上段)、
横から見ると、尻尾は和犬のように巻いているものの、 牙やアバラ表現はオオカミである(写真下段)。 和犬であるべきものが、オオカミ風にアレンジされている。 ここが、お犬さま信仰の地、武蔵(奥多摩)であることから、 建立:文政5年3月(1822) 東京都青梅市成木7町目高水山 |