〜ウサギ(1) 月の兎
「調神社」の「調」と「月」とが共に「ツキ」と読むことから、
月待ち信仰と結びつき月の使いといわれる「兎」が調神社の神使とされた。
「調(ツキ)神社」と月と兎
「調」は「ツキ」と読み、「つきじんじゃ」と社名を読む。
「つきのみや」とも呼ばれる。
「調神社」は平安時代編纂の「延喜式」に載る格式の高い古社である。
祭神は天照大神(伊勢神宮の祭神)、豊宇気姫命(食物をつかさどる神で伊勢神宮の外宮の祭神)、素戔鳴尊(天照大神の弟神)の三柱で、伊勢神宮との深い縁を示している。
「調」は大宝律令制の「祖・庸・調」の「調」で、成年男子の人頭税として繊維製品、海産物、鉱産物など土地の名産を主に賦課するものだが、ここ(この神社)の場合は伊勢神宮への調物(献納品)を指し米穀なども含んでいた。
この地に伊勢神宮への調物(献納品)の集積配送用の倉庫群があり、この中に「調神社」は鎮座した。
そのため、調物の搬入出の邪魔にならないようにと神社の鳥居や門は取りさられたとのことで、現在もない。江戸時代(享保の頃)に、「調」と「月」が共に「ツキ」と読むことから、「月待ち信仰」に結びついた。
このことから、月の神の使いとされる兎がこの神社の神使とされるようになった。

月と兎の話〜 

  
調(ツキ)神社
神社は「つきのみや」ともよばれる
享保18年(1733)に調神社本殿として建立された社殿(旧本殿)が今でも稲荷として残るが、ここには兎の彫刻もみられ、月待信仰との関係を物語っている。

旧本殿の左右脇の月と兎の欄間彫刻 

「ツキはツキを呼ぶ」とのことから、幸運を呼ぶと信仰されている。

さいたま市浦和区岸町3-17-25
宇都宮線/京浜東北線浦和駅西口下車、徒歩600m

子持の兎像が境内入り口の両脇に奉納されている。

 
                         
参道入り口の子連れ兎像
建立年
 萬延2年3月(1861)
石 工
 板橋宿 兼吉
参道の手水舎は兎の口から水が…

月山権現(月読命)の兎〜月山本宮
山形県にある月山は、羽黒山、湯殿山と共に「出羽三山」と呼ばれるが、出羽三山は古くから山岳修験の山として知られる。
出羽三山は、三本足の霊烏
(れいう)に導かれて羽黒山に登った、第32代崇峻天皇の皇子、蜂子皇子によって、推古天皇元年(593)に開かれた。
月山の山頂(1984m)には月山本宮があり、月山権現(月読命)を祀る。
月山
八合目の御田ケ原参籠所に月山本宮の鳥居があるが、この前に単体だが大きな兎の石像があり、月山山頂の月山本宮を見上げている
兎は、月山本宮の祭神、月山権現(月読命)の神使であり、「月」を象徴しているものと思われる。


                  山形県鶴岡市羽黒町手向字手向7
                   鶴岡駅から庄内交通バスで月山八合目下車
田主丸・月読神社
祭神は月読命(つくよみのみこと)
明治13年(1880)に当地に勧請された神社。
月読命(月神)の神使であるウサギが、鳥居の左右に建つ灯篭の屋上にいた
灯篭に銘はないが、鳥居は明治41年(1808)の奉納。
九州では、神使、狛犬などの像を屋上に載せた灯篭をときおり見かける。


                  福岡県久留米市田主丸町田主丸
                   久大本線「田主丸」駅下車歩8分
月輪勢至堂(つきのわのせいしどう〜福正寺管轄)
月輪大納言藤原兼実公が常に尊崇礼拝していたと伝えられ、勢至菩薩像を祀る。
建久7年(1196年)の創建と伝う。
勢至菩薩は、月待信仰の「二十三夜待ち」のご本尊である。
このご本尊に、月齢が二十三日の夜、月待ちをして祈れば願い事が叶うと信仰されている。
案内坂によると、堂内の須弥檀の四方には勢至菩薩にお仕えする卯の彫刻が施され、郷の人は兎を食べないといわれる、とある。
月神の神使であり、月の象徴でもある「うさぎ」の一対が奉納されている。
「福うさぎ」と呼ばれている。

             子持ち、珠持ち、阿吽の白ウサギ像
              平成17年(2005)10月吉日建立
              勢至堂屋根塗替工事・福うさぎ奉納
               奉納者多数(記銘150人以上)
               別当住職 大沢貫秀
              施工 石匠武藤石材


                  埼玉県比企郡滑川町大字月輪454
                    東武東上線「つきのわ」駅下車15分